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【助産師執筆】産後4週(産後1ヵ月)
産後体はこう変化する!
乳腺炎のケア・家族計画についても紹介!

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産後の生活はいかがでしょうか。
少しずつ体の痛みが取れたり、悪露が減ってきたりと変化を感じる頃かもしれません。しかし、睡眠不足で疲労が溜まりやすい時期。
無理は禁物です。
また、授乳生活はいかがでしょうか。こちらもまだまだ乳房の変化が激しく、トラブルが起きやすい時期でもあります。今回は、乳腺炎に関するケアをお伝えしつつ、それに伴う体の変化や家族計画についてもお伝えします!

  • 子宮のスムーズな回復のために無理をしない
  • 乳腺炎は早めに受診する
  • 産後1ヶ月健診までは避妊しよう
  • 家族でしっかりと『家族計画』について話そう


産後の体の変化

子宮の回復と悪露

子宮は筋肉でできており、出産直後から強く収縮して元の大きさに戻ろうとします。
4週間程度で妊娠前の大きさに近づき、6〜8週間で妊娠前と同じ大きさに戻ります。
この時期は、生理のような出血が続きます。これを悪露(おろ)と呼び、子宮内膜や胎盤の残りなどが含まれています。
子宮の中の胎盤が剥がれた部分は時間をかけてゆっくりと修復するのですが、産後に無理をしてしまうと中々その修復が進まず、悪露が長引いてしまいます。
体は元気でも、子宮の回復のためにも産後1ヵ月は重いものを持ったり、家事をできるだけ控えて無理なく過ごしましょう。

乳房の変化

母乳分泌のための基盤作りは、実は妊娠16週頃から始まっています。
そしてお産が終わると、胎盤が子宮から剥がれることによってプロゲステロンというホルモンが急激に低下します。
この低下がきっかけとなり、乳汁生成が開始します。産後3〜4日目は胸が張って痛かったかもしれませんが、それは、この時期に母乳の排出(乳頭から出るかどうか)に関係なく乳汁が作られるからです。
その後9日目頃からは、授乳回数に応じて乳汁分泌を維持できるようになります※1 。この時期には、「胸が張らなくなったので母乳分泌が減ったのでは」と心配される人も多いです。しかし心配は不要です。
胸が張らなくなるのは、どれくらいの母乳を作ればよいか、体の調整が出来てきた証拠です。しかし、そうなるまでには個人差があります。
最近ようやく張りに慣れた、と言う方もいるかもしれませんが、産後3ヵ月頃になると、もう一段階胸の張りも落ち着くと思います。


放っておくと怖い乳腺炎

乳腺炎ってなに?※2

乳腺炎とは、胸の痛み、赤みや腫れが出る乳房の変化、トラブルのひとつです。
症状としては、胸の痛みのほか38.5度以上の発熱により悪寒やインフルエンザのような全身症状が出ます。
乳房に起こる炎症ではありますが、必ずしも細菌感染を伴うものではありません。乳房の強い張りや詰まりがあれば、細菌感染がなくてもこのような症状が見られます。
最初は乳腺の詰まりでも、放っておくとその後は非感染性乳腺炎、感染性乳腺炎と変化し、悪化すると膿を持ってしまい、皮膚に少し切り込みを入れて膿を出す様な処置が必要になります。

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乳腺炎のセルフケア

乳腺炎はどの段階においても、基本的には赤ちゃんにしっかりと母乳を吸って飲んでもらうことが重要です。
はじめに違和感を覚えるのは、胸にゴリっとしたしこりができて、なかなか取れないという感覚かと思います。
そんな初期段階であればセルフケアで対処し、トラブルを解消することも可能です。
赤ちゃんは、上あごよりも下あご側の方が飲み取る力が強いので、詰まっている部分に下あごが当たる様に授乳しましょう。


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内側にしこりができた時は横抱き、脇の方にしこりができた場合は脇抱き(フットボール抱き)、下方向にできたら縦抱きなどがおすすめです。


乳腺炎受診の目安

セルフケアでの対処もできますが、悪化するとその後のケアも大変になりますので、早めの受診が大切です。
抱き方を工夫してもしこりが取れなかったり、取りにくい場所にしこりがある時などは、助産師の乳房ケアを受けると良いですね。
乳腺炎は数時間~1日で悪化します。
しこりのみの場合は、1日様子を見て改善しなければケアを受けることをおすすめします。一方で、胸にうっすらと赤みや痛みが出てきている場合はすぐに助産師に相談すると良いでしょう。出産した産院に乳房外来があるかどうか、また地域の助産院などをあらかじめ確認しておくと、もしもの時に安心です。
さらに、本格的に熱が出てきたら、鎮痛薬や抗生剤の使用が必要になるかもしれません。
その場合には地域の助産院に相談してからでもいいですが、提携病院などでのお薬の処方が必要になる可能性も高いでしょう※3


乳腺炎の予防はどうするの?

母乳育児は難しそうと感じる方がいらっしゃるかもしれませんが、決してそうではありません。
乳腺炎にならないために、日頃からどんなことを心がければよいかお話しします。
まずは、急な授乳生活の変化を避けることを心がけましょう。母乳分泌は、赤ちゃんの必要量に合わせて徐々に体が適応していきます。
ですので”赤ちゃんの成長に伴って授乳間隔が徐々に空く”などは問題ありませんが、いきなり数回の授乳をスキップさせるなどはしない方が良いですね。
お出かけなどで授乳間隔が空きそうな時は、事前に授乳室を確認しておいたり、赤ちゃんと一緒でない場合には適宜搾乳したり、帰宅後に赤ちゃんにしっかり吸ってもらいましょう。
逆に、乳房がすっきりしないからと言って搾乳をしすぎることも禁物です。母乳が出すぎる事を分泌過多といいますが、搾乳をしすぎるといつまでたっても母乳の量が定まらず、分泌過多になってしまいます。どうしても胸がしんどい時には、できるだけ乳頭・乳輪部分は刺激せず、乳房から圧をかけ軽く絞る程度にしましょう。

また、ストレスや疲労を溜めない生活も望ましいです。環境の変化や精神的な変化がある時も乳腺炎になりやすいと言われています(”おっぱいの詰まりは心の詰まり”とも言うくらいです)。
不安な時は気分転換のつもりで受診し、助産師とたくさん話すことも良いのではないでしょうか。

最後に、お食事についてです。食生活については「油物は避けるべき、ケーキは危険」など聞くこともあるかもしれませんが、現時点ではそれらに医学的根拠はありません。それでもバランスの取れた食事は授乳にとっても良いことなので、心がけるようにしましょう。

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家族で話そう『家族計画』

まだ始まったばかりの赤ちゃんとの生活ですが、次の子の妊娠についての大切な情報もお伝えします。

家族計画とは

家族計画とは、家族が健康で幸せに暮らしていくために、ママ・パパが避妊を上手く取り入れながら、自分たちの子どもをいつ・何人産みたいか考えること※4 です。

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産後、いつから妊娠しても良い?

WHOのガイドラインでは、出産から次の妊娠まで最低でも18ヵ月、理想は24ヵ月を空けることを推奨しています※5 。しかし、2018年に行われた研究では※6 、出産と次の妊娠の間に12ヵ月~18ヵ月の間隔を空けることが望ましいこと、前回の出産から12ヵ月以内の妊娠は、あらゆる年齢の女性にとってリスクとなること、若い女性でも、前回の出産から6ヵ月以内に妊娠すると早産の可能性があることが明らかにされています。
帝王切開の場合は、医学的根拠はないのですが、子宮内膜の回復や、切開部分の回復のことを考えて1年程度は避妊をすることが推奨されています。他にも考えるべきポイントとして、妊婦になった時に上の子のケアがどれくらいできそうかということも大切です。つわりの酷さや合併症・入院歴など、前回のマタニティライフがどのようであったかを考え、妊娠後の生活もイメージしながら計画を立てましょう。

避妊は確実に。月経再開前に妊娠することも

産後は、授乳期間が長いほど月経の再開が遅れます。しかし、これもとても個人差のあることです。
月経が再開するということは、その前に排卵があります。妊娠を考えていない場合は、月経開始前でも確実に避妊を行いましょう。
妊娠をする前は、避妊方法としてピルも選択肢にありましたが、授乳期のピルは時期や授乳頻度を踏まえて医師との相談が必要です。
使用できない場合は、コンドームなど他の避妊方法を選択しましょう。


いかがでしたでしょうか。乳腺炎や家族計画など難しい話題でしたが、私たちはいつでもみなさんのそばにいます。

気になることはXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。

参考文献

※1 NPO法人日本ラクテーションコンサルタント協会,母乳育児支援スタンダート新装版,医学書院, 2012, 100-102.

※2 Lisa Amir and The Academy of Breastfeeding Medicine, ABM臨床プロトコル第4号 乳腺炎 (2014 年改訂版), 日本ラクテーションコンサルタント協会, 2022/3/30閲覧,
https://www.jalc-net.jp/dl/ABM_4_2014.pdf

※3 日本助産師会, 乳腺炎ケアガイドライン2020, 日本助産師会出版, 2020, 71-72.

※4 家族計画, 国際保健用語集, 一般社団法人 日本国際保健医学学会,2022/4/20閲覧
https://seesaawiki.jp/w/jaih/d/%B2%C8%C2%B2%B7%D7%B2%E8

※5 WHO, Infant and young child feeding,2022/3/30閲覧,
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/infant-and-young-child-feeding

※6 Laura Schummers, Association of Short Interpregnancy Interval With Pregnancy Outcomes According to Maternal Age, JAMA Internal medicine, 2018 Dec 1;178(12):1661-1670.


記事を執筆したのは…

株式会社With Midwife
代表取締役

岸畑 聖月
きしはた みづき

PROFILE

14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。

本記事のイラスト:Junphant

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