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【助産師監修】産後9週(産後2ヵ月)
尿漏れと産後の体の整え方の基本

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産後2ヶ月が経ちましたね。出産から2ヶ月も経ったのに、尿漏れが続く…というご相談を受けやすい時期です。みなさんは、産後の生活の中で尿漏れが気になったり、ショックを受けたりしていないでしょうか。もしかしたら妊娠中から実は気になっていたママもいるかもしれません。今回は、そんな尿漏れと、基本的な産後の体のセルフケアについてお伝えします!

  • お産のための体の変化で、産後は尿漏れしやすい
  • 尿漏れは約3割の女性が産後早期に感じている
  • 「骨盤矯正」という言葉は医学的にはない
  • 特別なケアよりも骨盤・膀胱に負担をかけない生活で回復を促す!


尿漏れはなぜ起こる?

分娩に向けた体の変化が尿漏れの原因に

お産の時、赤ちゃんはママの骨盤を前後左右に押し広げながら外へ出てこようとします。そのための準備は妊娠中から始まっており、エストロゲン、プロゲステロン、リラキシンといったホルモンが、骨盤を構成する骨を繋いでいる靭帯を緩めて、赤ちゃんが出てきやすいようにしていました。子宮や膀胱などの臓器を支える筋肉である骨盤底筋群の緩みや、お産の時に赤ちゃんの頭で尿道周りの筋肉や神経が押されること、そしてお産の時の傷などによって、産後の尿漏れは起こりやすくなります※1

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尿漏れの種類もいろいろ

緩んだ骨盤底筋群に急激な腹圧がかかると尿漏れをしやすくなります。くしゃみや咳をしたとき、重いものを持ったときに起こる尿漏れを”腹圧性尿失禁”といいます。これを避けるためにも重いものはなるべく持たないようにして、骨盤周囲への負担をかけないようにしたいですね。これ以外にも、トイレまでコントロールできないような”切迫性尿失禁”という尿漏れもあります。これは、膀胱自体の調節機能に問題があります。多くは産後数日で落ち着いてくると言われていますが、もし続くようであれば、かかりつけ医にご相談くださいね。特に産後は、この腹圧性と切迫性の混合型を含む場合があります。

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尿漏れが続く期間は?

実際にどれくらいの人が尿漏れを感じているのでしょうか。ある調査では、分娩後3~5日間に尿漏れの経験をした人は30.8%、そのうちの44.7%は産後3ヵ月においても尿漏れを感じていました。また、会陰切開など何らかの医療介入があった人の方が、より尿漏れを感じていました※2。中には産後1年の時点でも尿漏れを感じている人もおり※3、産後の尿漏れが長期化してしまうママもいるようです。


気になる骨盤矯正とは?

最近よく耳にする「骨盤矯正」という言葉ですが、実は医学的な用語ではなく、民間療法の一つです。ですので、医師が推奨したり、実施するものではありません。
ですが、妊娠中にはさまざまな組織が引き延ばされ、産後に赤ちゃんがいなくなった分スペースができ、重力で臓器が移動してしまいます。臓器が正しい位置に戻っていないまま支える筋肉が硬くなってしまうと、骨盤周辺の筋肉や靭帯、骨に負担がかかり、筋肉の組織の回復も妨げられてしまいます※4。そのため、体を元の状態に戻してあげることは大切です。


正しい姿勢で体に負担をかけずに過ごそう

頑張りすぎないことが産後の仕事

それでは、どうすれば産後の体が回復して、尿漏れにも悩まずに済むのでしょうか。産後のママの体には、妊娠前の体の状態に回復していく能力が備わっています。産後、あまり動き過ぎてしまうと、重力の関係で膀胱周辺にとても負担がかかってしまいます。回復を促すためにも”横になる”ことを意識して、自然に体が回復しやすいように過ごしてくださいね。

赤ちゃんとの生活、どんな姿勢がいいの?※4

さて、産後の赤ちゃんとの生活ですが、慣れない動作をたくさんしなければなりません。ここまでお話ししたように、骨盤のケアとしては何か特別なことをするよりも、なるべく骨盤周辺に負担をかけないよう、正しい姿勢で過ごすことがとても大切です。辛い姿勢を取っていると、筋肉もこわばり血液の循環も悪くなり、回復にも時間を要してしまいます。今一度、無理な姿勢を取っていないか見直してみましょう。

●抱っこ
1日に何度も赤ちゃんを抱っこしなければなりません。畳の上やベビーベッドの上など、低い位置から抱き上げることがほとんどですが、その際に背中が丸まったり反り返ったりしないように注意しましょう。しっかりと座るか、しゃがんで腰を落として胸の位置に赤ちゃんを抱いてから立ち上がりましょう。ベビーベッドの柵も、しっかりと下げた方が良いですね。

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●授乳
授乳も1日に何度も行う動作ですね。じっとしている時間も長くなります。みなさんは、リラックスして行えていますか。腕だけで赤ちゃんを支えることは禁物です。赤ちゃんの下だけではなく、ママの背中にもクッションやタオルを差し込んだり、足台を利用したりすることで、力を抜いて授乳できる姿勢を見つけましょう。ミルクをあげるときも、赤ちゃんを支える手が疲れないように工夫をしてみてくださいね。

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●お風呂
一緒にお風呂に入る時期になっても、沐浴の方が便利な場合もあります。沐浴をする際もお湯をはったベビーバスはとても重いので、お湯が入った状態で移動させることはやめましょう。また、体に負担のかかりにくい場所で沐浴するようにしましょう。一緒にお風呂に入っているときは、前かがみになって赤ちゃんを洗わないように気をつけて下さいね。水遊び用の遊具ではなく、赤ちゃんのお風呂用の椅子など専用の補助具を使うと良いかもしれませんね。


恥ずかしくない!困ったら受診しよう※3

ある研究によると、尿漏れの症状がある人のうち泌尿器科の受診経験がある人の割合はたったの6%でした。産後の尿漏れは、稀に慢性化してしまう場合もあります。産後3ヵ月目頃が尿失禁の自然回復のターニングポイントとも言われています。なかなか治らず困ったときには、早めの受診を心掛けましょう。 


いかがでしたか?気になることはXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。

参考文献

※1 森恵美, 妊娠期の診断とケア, 助産師基礎教育テキスト, 日本看護協会出版社, 2009,p36

※2 高岡智子, 産後尿失禁の有症率と分娩時要因の関連性の検討—自然分娩と医療介入のある分娩との比較—, 日本助産学会誌, Vol. 27, No.1, 2013,p29-39

※3 井上倫恵, 産後の女性における尿失禁有訴率および医療機関受診率の実態調査, 日本女性骨盤底医学会誌, 第17巻1号, 2020, p14-18

※4 ベルナデット・ド・ガスケ, 赤ちゃんと一緒に!ペリネのエクササイズ:お産の前から知っておきたい産後の骨盤低筋群とボティのトリートメント,メディカ出版, 2011


記事を執筆したのは…

株式会社With Midwife
代表取締役

岸畑 聖月
きしはた みづき

PROFILE

14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。

本記事のイラスト:Junphant

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