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【助産師執筆】産後10週(産後2ヵ月)
産後ダイエットっていつからできるの?
助産師が教える産後ダイエットの実際

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「なかなか妊娠前の体重に戻らない」「体重は戻っても体型が変わってしまった」そんな産後の体型に関するママからの相談は、産後2ヶ月頃から多くなってきます。ハードなダイエットは禁物だと知っていても、「何から始めれば良いのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
今回はそんな産後の体型管理について、助産師が専門的知識とともにお伝えします。

  • ホルモンが影響する産後のカラダとココロ
  • 授乳方法によってダイエット方法は変わる
  • 産後ダイエット成功のカギは「睡眠」
  • 産後ダイエットは早く始めればいいわけではない!
  • 産後2ヶ月が経ったママへのおすすめ簡単エクササイズ
  • “出産”という大仕事を終えたママへ


産後ママのカラダとココロ

出産はカラダもホルモンも劇的に変化する時期です。妊娠中は“おなかに赤ちゃんがいるからしょうがない”と体重増加を受け入れながらも、産後なかなか戻らない体重や体型にネガティブな感情を抱くママも少なくないかと思います。妊娠中は約10ヶ月かけてゆっくりとおなかのなかで赤ちゃんを大切に守り、出産時には数時間で約3キロの赤ちゃんがママのおなかからでてくる、この大きな変化によって、骨盤や筋肉、靭帯などあらゆる組織にダメージを残していきます。出産を経験したママの4人に3人は出産後の不調を感じていて※1、その後も家事や育児に追われることによって不調を抱えたまま生活していると言われています。
カラダの不調で言えば

カラダの不調の一例

  • 尿もれ
  • 腰痛
  • 肩こり
  • 便秘
  • 痔(ぢ)
  • 腱鞘炎
  • 頭痛
  • 恥骨痛
  • 骨盤の不安定感

など病院に行ってもすぐにはよくならない不調が続き、さらには授乳やオムツ交換でまとまった睡眠が取れず、ココロも不安定になってきます。
妊娠・出産のため約10ヶ月かけて変わってきたカラダです。同じだけの期間をかけてゆっくりとカラダを元に戻してあげることが、心身ともに負担をかけないためにオススメです。まずは「今日は少しでも◯◯ができた♪」と、ママ自身の“できた”を増やして自分をご機嫌にしてあげることから始めましょう!


授乳方法によってダイエット方法は変わる?

「完全母乳だとダイエットしやすい」なんて言葉を聞いたことがある方もおられるかもしれません。授乳方法にはミルク、混合、完全母乳と様々な方法があり、それぞれによって、ママへの推奨摂取カロリーが変わってきます。

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※身体活動レベル 低い:生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合。 普通:座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業、接客等、あるいは通勤・買物・軽いスポーツ等のいずれかを含む場合。 高い:移動や立位の多い仕事の従事者。あるいは、スポーツなど余暇における活発な運動習慣をもっている場合。

こちらの表は成人女性の目安であり、混合の方も含め、授乳中だと【+350kcal】の摂取が推奨されています。※2
ですので「体重が戻らないから」と無理に食事の量を減らすことは危険です。産後はカラダが元の状態(産前の状態)に戻ろうとしている時期で、通常より必要な栄養素が増えている時期になります。
こんなお話をしていると「ミルクなのにお腹が空くのはなんで?」と思われる方もいるでしょう。それは、ミルクといっても生後数ヵ月の赤ちゃんはまだまだ夜間授乳を必要としていて、それによってママも睡眠不足になるからです。細切れの睡眠と、生活習慣の変化やストレスによって消費エネルギーも多くなります。


産後ダイエット成功のカギは「睡眠」?

睡眠不足になることで脂肪細胞から分泌される【食欲を抑えるホルモン(レプチン)】の分泌が少なくなり、逆に胃壁細胞から分泌される【食欲を高めるホルモン(グレリン)】の分泌が増えるため、食欲が増しやすくなります。※3
しっかりと睡眠を取ることが産後ダイエット成功のカギになります。とはいっても細切れの睡眠と、エンドレスな夜泣きや授乳…「いつ寝ればいいの?」そう思いますよね。家事が終わらなくて「赤ちゃんが寝ている間に」と忙しく家事をされている方も多いのではないでしょうか?ママの毎日の仕事は「赤ちゃんのいのちを守ること」であり、家事を完璧にすることではありません。家事は家族に頼ったり、代行サービスを使ったり、食事を出来合いのもので済ませたり。「赤ちゃんのいのちを守る」ために、あえて“やらないこと”を決めることで、ママの睡眠を確保していきましょう!


産後ダイエットは早く始めればいいわけではない!

「産後ダイエットのカギは産後2~3ヵ月後」という言葉を聞いたことがある方もおられるかもしれません。産後6~8週間のママの体は「産褥期(さんじょくき)」といって、【出産が終了し、妊娠・出産に伴うママの身体の生理的変化が妊娠前の状態に戻る期間】となります。テレビやSNSなどで「出産後も妊娠前と変わらない姿」を見て驚くことがありますが、この期間に無理をして強度の高い運動や、極端な食事制限をすることは実はとても危険なことです。
例えば、骨盤底筋群へのダメージ。骨盤底筋群とは、骨盤内にある膀胱や子宮、直腸などを正しい位置に保ったり、尿道を締めて尿漏れを防ぐなど重要な役割を担っている部分です。妊娠期間中、赤ちゃんや胎盤、血液などの重みを支えるために、本来よりも薄く引き伸ばされて働きが弱くなっていることが多いです。また出産によってもダメージが加わり、産後に「尿もれ」や「膣のゆるみ」を感じる方は出産方法に関わらず多くおられます。※4
これを放ってダイエットを始めることは、産後の尿もれや腰痛・恥骨痛の継続だけでなく、歳を重ねてからの尿もれや子宮が膣からでてくる子宮脱の原因になると言われています。
続いて、腹筋群へのダメージ。妊娠期間中、お腹が大きくなることで、腹直筋(いわゆるシックスパック)が真ん中で左右に離れていきます。産後6週間で10人に6人、産後1年たっても約2人に1人は腹直筋離開、いわゆる腹筋が真ん中で左右に離れた状態になっていると言われています。※5
昔、体力テストであった「上体起こし」のような腹筋運動を腹直筋が離開しているこの時期から行うことは、お腹を凹ませるためにやっているはずなのに逆効果であったり、腰痛、恥骨痛、尿もれなどを悪化させる可能性もあります。まずは、10ヵ月かけて変化した身体へのリハビリから行っていきましょう!


産後2ヵ月が経ったママへのおすすめ簡単エクササイズ

<上半身 ~初級~>
●腹式呼吸
妊娠中お腹にいた赤ちゃんの影響でしっかりと動かすことができなかった大角膜を上下に大きく動かすことで、1回で取り込める空気の量を増やしていきます。
  1. あぐらで座り、鼻からいっぱい息を吸ってお腹を膨らませます。このときにお腹が前にでるのではなく、背中や脇腹にも息を入れるように膨らませていきます。
  2. 口からゆっくりとお腹の中の空気を(すべて)吐き出します。
  3. 呼吸でしっかりと横隔膜を上下に動かしながら10~20回ゆっくりと繰り返します。

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●肩上げ下げ
抱っこや授乳でガチガチに固まった肩周りをほぐします。
  1. 両肩を上げて耳と肩の距離を縮めます。
  2. 耳に一番近くなったら“ストン”と両肩を脱力。気持ちが良いと感じる程度、10~20回ゆっくりと繰り返します。

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●肩回し
育児や授乳で巻き肩になっている肩と肩甲骨をほぐします。
  1. 肩に手を当てて、肘で大きく円を描くようにゆっくりと回します。
  2. 両肩同時に回しても、左右順番に回してもOK。10~20回程度ゆっくりと回します。

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<下半身 ~中級~>
●骨盤起こし
  1. 仰向けに寝て足を曲げ、足は腰幅に開く。
  2. 腰の下にできている空間をゆっくりと押しつぶすように、お腹をへこませ尾てい骨を浮かせる。
  3. 腰を床から5cm程度浮かせる。
  4. ゆっくりと腰→尾てい骨の順で床に戻し、2→3を繰り返す。

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“出産”という大仕事を終えたママへ

出産後の体調や、出産のダメージの回復スピードには個人差があるため、ダイエットにいつからOKという基準はありません。特に、妊娠前に運動習慣のなかったママは、急に激しい運動を開始するのではなく、専門家に確認しながらはじめは軽めの運動・リハビリから行って、体を少しずつ慣らすようにしていきましょう。

また、気になることはXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。

※注意 ここでご紹介した運動は、産後1ヵ月健診で産婦人科医による運動許可が出てから行うようにしてくださいね。

参考文献

※1 寅嶋静香, 産後女性の身体状況把握及び産後運動ケア実践の提案-460人のアンケート調査及び健康運動指導実践のケーススタディから-, 2016, 2022/9/6閲覧,
https://www.waseda.jp/inst/cro/assets/uploads/2016/04/f0d04c10d8d52364f9ee19497ab725ef.pdf

※2 厚生労働省,「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書, 2019/12/24, 2022/9/6閲覧,
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html

※3 三輪,高橋,西村,岩間,工藤他, 食欲調整ホルモン(レプチン、グレリン)と睡眠時間・睡眠の質との関係, 体力・栄養・免疫学雑誌(JPFNI), 2015(25)1[52-58]

※4 Brown SJ, Gartland D, Donath S, MacArthur C. Effects of prolonged second stage, method of birth, timing of caesarean section and other obstetric risk factors on postnatal urinary incontinence: an Australian nulliparous cohort study. BJOG. 2011 Jul;118(8):991-1000

※5 Sperstad JB, Tennfjord MK, Hilde G, Ellström-Engh M, Bø K. Diastasis recti abdominis during pregnancy and 12 months after childbirth: prevalence, risk factors and report of lumbopelvic pain. Br J Sports Med. 2016 Sep;50(17):1092-6.


記事を執筆したのは…

株式会社With Midwife
代表取締役

岸畑 聖月
きしはた みづき

PROFILE

14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。

本記事のイラスト:Junphant

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