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【助産師執筆】産後27週(産後6ヵ月)
フォローアップミルクって必要?
離乳食と栄養について考える

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よく耳にするフォローアップミルク。
どう使えばよいのか、いつからあげれば良いのか、そもそもうちの子には必要なのか…
様々な疑問をお持ちの方が多いのではないでしょうか?今回はフォローアップミルクと食事についてお伝えしたいと思います。


  • 牛乳の代わりに飲ませるための食品として開発されたもの
  • 離乳食が進んでいれば必ずしも必要ではない
  • ミルクが飲める子はミルクのままで大丈夫
  • 亜鉛や銅の欠乏に注意が必要


フォローアップミルクってそもそも何?

一般的なミルクとフォローアップミルクのちがい※1

育児用ミルクは実は様々な種類があります。
乳児用調整粉乳(いわゆる一般的な0ヵ月からの育児用ミルク、以下ミルク)、フォローアップミルク、低出生体重児用粉乳については、「乳および乳製品の成分規格等に関する省令(食品衛生法)で『調整粉乳』に指定されています。
使用する乳および乳製品以外の原材料の種類および混合割合について、厚生労働大臣の承認が必要となります。
その中で、ミルクは、健康増進法に基づく特別用途食品としての乳幼児食品に指定されています。
これは、販売にあたって厚生労働大臣の許可も必要です。
フォローアップミルクは、母乳代替え品ではなく食品の一つとされています。
もともと牛乳の代わりとして飲ませるために開発されたものですので、位置づけが母乳・ミルクとは異なることを覚えておきましょう。

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母乳・ミルク・フォローアップミルクの成分※1,2

母乳やミルクは、生後5~6ヵ月までの乳児が必要とする栄養成分すべてを満たしている、完全食品です。
しかし母乳はカルシウム、鉄、ビタミンD、ビタミンKが少ないため、それぞれの欠乏に対して対策が必要になってきます。
ビタミンKは出産後にシロップの内服で補っていましたね。鉄に関しては産後21週のコラム『そろそろ離乳食始めたほうがいいの?そう思ったらまず読んでほしい、助産師が教える離乳食の始め方』でも

  • 貯蔵鉄は生後約6ヵ月までに使い果たされてしまう
  • 生後6ヵ月ごろから母乳やミルクから得られるエネルギー量と、必要とするエネルギー量に差が生じる
ということをお伝えしたと思います。
しかし、適切な時期に離乳食を開始することで鉄不足をカバーできますので安心してくださいね。また鉄や亜鉛も、ミルクよりも母乳のほうが濃度は低いですが、吸収率は20%と、ミルクの5倍です。
腸管に負担を与えず、必要量をきちんと摂取できるように設計されています。※3
今回のテーマであるフォローアップミルクは牛乳よりも鉄含有量が多く、消化の負担を考えてタンパク質が少なく調製されています。
使用する時期の栄養の主体はあくまでも離乳食であり、それをベースに併せてフォローアップミルクを利用することで、必要な栄養素を充足できるように調製されています。

フォローアップミルクの成分の特徴をまとめると以下の通りです※4

フォローアップミルクの特徴

  • 離乳期以降の幼児において不足しやすい鉄およびカルシウムは、ミルクより多い。
    (フォローアップミルクの鉄含有量は育児用ミルクの約 1.4 倍※5
  • タンパク質、マグネシウム、ビタミンB1、ビタミンB6も母乳やミルクに比べて多く含まれる。
  • 脂肪は、ミルクや牛乳より少ない。
  • 母乳代替品ではないため、ミルクで添加が認められている銅と亜鉛は強化されていない。(ミルクは母乳代替品とも呼ばれ、亜鉛塩類、銅塩類の添加が認められています)

フォローアップミルクはどんなときに必要?

完全母乳では鉄が足りていないのでは無いかと心配に思われる方もいると思います。
基本的に、離乳食が進んでいれば問題なく、フォローアップミルクを使用する必要もありません。
しかし、9ヵ月以降になっても離乳食がなかなか進まないときや、特に動物性タンパク質が上手く摂取できないときには使用すると良いでしょう。
しかし、ミルクにも、鉄およびカルシウムが含まれているので、ミルクを飲んでいる子はミルクのままでもかまいません。

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なぜフォローアップミルクを使用する場合は9ヵ月からなの?

2回食のうちは、赤ちゃんの栄養分は母乳やミルクなど、完全食品を与え続けながら進める事が前提となっています。
その時期のミルクをフォローアップミルクに変えてしまうと、栄養不足になりますので使用はおすすめできません。
フォローアップミルクを使用する場合、9ヵ月からとされているのは

  • 9ヵ月頃から食事由来の鉄欠乏性貧血のピークとなること
  • タンパク質が多いので、消化に負担がかからなくなる時期(牛乳は1歳~が推奨されています※5)
という理由があるからです。


フォローアップミルクを使う時には、こんなことに気をつけよう!

亜鉛欠乏、銅欠乏に注意する※6

お伝えした通り、亜鉛も銅も成長発達に欠かせないとても大切な栄養素ですが、フォローアップミルクには含まれていません。
特に亜鉛は①身長の伸び(小児) ②皮膚代謝③生殖機能④骨格の発育⑤味覚の維持⑥精神・行動への影響⑦免疫機能 などに関与しています。
また、美味しいものを美味しいと感じられるようになるには欠かせない栄養素で、離乳食の進みにも関係してくる部分です。
また、不足すると貧血の原因にもなりますので、動物性のタンパク質から摂取できるようにしていきましょう。

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下痢の時には一度使用を控えてみる

フォローアップミルクに変えたら下痢をするようになったというご相談も受けます。
タンパク質は牛乳よりも多くならないように調製されていますが、やはり消化への負担はミルクよりも大きいです。
特に下痢の時は、赤ちゃんが乳糖を分解する力が落ちているので、乳製品の摂取には注意が必要です。フォローアップミルクを中止するよう医師からすすめられる場合もあるかもしれません。
状況に応じてかかりつけ医に相談してみましょう。

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いかがでしたか?フォローアップミルクは、“育児用ミルクのバージョンアップしたもの”や“9ヵ月から飲ませるミルク”だと勘違いして捉えている方もいますが、位置づけが全く違うものです。イメージに流されず、お子さんに必要かどうかを考えて上手く利用していけると良いですね。

迷ったときには、Xで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。

参考文献

※1 井戸田正,育児用ミルクの種類と製造方法,周産期医学,vol.35 増刊号, 2005,359-364
https://www.beanstalksnow.co.jp/wp-content/uploads/2016/10/%E8%82%B2%E5%85%90%E7%94%A8%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E3%81%A8%E8%A3%BD%E9%80%A0%E6%96%B9%E6%B3%95.pdf

※2 児玉浩子, 幼児の栄養:フォローアップミルクを見直そう, 小児科臨床vol69No.11, 2016, 141-147
https://www.wakodo.co.jp/ikuji/kankeisha/report/pdf/baby13.pdf

※3 日本ラクテーション・コンサルタント協会, 母乳育児支援スタンダード, 医学書院, 2007, 114

※4 乳と乳製品のQ&A「乳児用調整粉乳」と「フォローアップミルク」の違いは何ですか?,一般社団法人 日本乳業協会, 2022/9/2閲覧,
https://nyukyou.jp/dairyqa/2107_113_322/

※5 授乳・離乳ガイドライン, 厚生労働省, 2022/9/2閲覧,
https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000496257.pdf

※6 亜鉛欠乏症の診療指針 2018, 一般社団法人 日本臨床栄養学会, 2022/9/2閲覧,
http://jscn.gr.jp/pdf/aen2018.pdf


記事を執筆したのは…

株式会社With Midwife
代表取締役

岸畑 聖月
きしはた みづき

PROFILE

14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。

本記事のイラスト:Junphant

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