【助産師執筆】産後32週(産後8ヵ月)
みんなどうしてる?
スプーン・ストロー・コップの練習方法
赤ちゃんに初めて母乳やミルクをあげた時に、どうして上手に吸えるの?と驚いたママも多いかと思います。
これは、赤ちゃんには口で乳首に触れたりくわえたりすると、舌をリズミカルに動かして吸える吸啜反射というものがあり、おなかの中にいる時から練習をしていたためです。
そして、嚥下(えんげ)反射があるおかげで、口唇や舌や顎を動かして吸ったものを飲み込むことができるのです。
さて、いざ離乳食が始まると、水分は何を使ってどうあげたら良いの?と気になることでしょう。
今回は、離乳食が始まってからのスプーン・ストロー・コップなどの練習方法についてお話しします。
- 赤ちゃんは発達ごとに、舌や唇の使い方が上達する
- 赤ちゃんにあげる飲み物は、湯冷まし、麦茶がベスト
- ジュース、イオン飲料、牛乳などの注意点を知っておこう
- 何であげるかに迷いすぎず、赤ちゃんの反応をよく観察しよう
赤ちゃんの口腔発達ごとのポイント
●5〜6ヵ月頃(ゴックン期): 唇を閉じてゴックンと飲み込む・ 食べ物をこすり取る離乳初期の時期は、離乳食を飲み込むことや食べ物の舌触り・味に慣れることが目的です。
この頃の赤ちゃんは、口唇を閉じて食べたり飲んだりできるようになり、口に入ったものを舌で前から後ろへ送り込むことができます。※1
指しゃぶりなどで、乳首以外のものを口に入れる練習もしていたとはいえ、スプーンなどが入ってくることは初めてです。
はじめから抵抗なく受け入れられる赤ちゃんもいれば、そうでない赤ちゃんもいます。口を開けてくれなかったり、舌でスプーンを押し返したりするからといって”嫌がっている”と決めつけないようにしましょう。
赤ちゃんは、ただ単に経験が少ないだけなのです。
そうした経験値をあげる意味でも、離乳食の際はスプーンやお椀を繰り返し使用することで赤ちゃんに慣れてもらうことが大切です。
乳首や哺乳瓶以外のアイテムでは、自分で吸うストローなどは使用が難しい時期ですが、傾けると自然に飲み物が出てきて、乳首に似た柔らかい吸い口のスパウトマグなら使用できることがあります。
ですが、飲めなくても不安にならないでください。
「少しずつ慣れていくことが大切」と成長を見守っていきましょう。
食べさせる時のポイント
- 上あごにスプーンをこすりつけないように気をつけ、水平にすっと下唇にのせて上唇が閉じるのを待とう
- スプーンは大きすぎず、平らなものでお口のサイズにあったものを選ぼう
- まずは毎日継続してみよう
個人差もありますが、この頃に歯が生えてくる赤ちゃんもいることでしょう。
もぐもぐ期になると食べ物を舌と口唇で押しつけてつぶし、舌、顎の動きは前後から上下の動きへ移行します。※1
舌や上顎の前の部分は、食べ物の食感や形、大きさを認識する上で重要な役割をしています。
飲み物については、ストローマグなどで練習することで、少しずつ吸うことができるお子さまもいるでしょう。
とはいえ、赤ちゃんにとってはまだ口唇を閉じて吸うことは難しいので、うまくいかなくても心配いりません。
また赤ちゃんがスプーンやストローなどを噛んでしまうこともあるかもしれませんので、危険はないか見守りが必要です。
食べさせる時のポイント
- 焦らずに、赤ちゃんが口唇で食べ物をしっかり取り込むまで待とう
- つぶした食べ物を飲み込みやすくするため、適度にとろみをつける工夫を
- 丸飲みしている場合は、舌でつぶせる硬さまで調節しよう
- スプーンやストローを噛む場合は、危険がないか見守ろう
舌で食べ物を歯茎の上に乗せられるようになるため、歯や歯茎でつぶすことができるようになります。※1
舌を左右に動かすこともでき、口唇は左右非対称の動きが可能となります。赤ちゃんはこの時期から1度ずつのコップ飲みから、連続してゴクゴクと飲めるようになってきます。
コップに入れる量は少ない方がこぼれにくいです。
ただ、赤ちゃんが自分でコップを持って調整することはまだ難しいので、適宜手伝ってあげましょう。
また、自分で食べたいものや、食事に用いる食器やお箸などに関心を持つため、食事が大変ですよね。ですが、手づかみ食べを通して食べ物を触ったりにぎる体験は、赤ちゃんの脳や心の発達を促す上で大切なプロセスです。
食べさせる時のポイント
- 食べさせる時は、くぼみのあるスプーンを下唇にのせ、上唇が閉じるのを待とう
- 手づかみ食べにトライし、少しずつ前歯(歯茎)でかじり取らせるようにしよう
- 今は汚れたり後片付けが大変な時期…と、割り切ることも時には必要
- ママもパパもストレスなく日頃から無理せず楽しく練習しよう
離乳完了期にあたるこの頃の食べ方は、一口の量を覚えながら自分で食べる準備をしていきます。
手や指の発達が進むため、自分でスプーンやフォークなども上手に使えるようになってきます。
コップ飲みは、おちょこなどの飲み口が広くて小さい器からトライしましょう。
徐々に慣れてきたら、軽くて両手に取手のついたコップなどを選ぶと良いですね。1歳6ヵ月の乳幼児健診における、赤ちゃんの発達の目安や保健指導のポイントの中でも、「自分でコップを持って水を飲めますか?」という項目があります。※2
こうして先々の赤ちゃんの発達段階に応じた食事の様子のイメージを持つことで、どんなアイテムを使用しながら飲む練習に働きかければ良いかイメージができればいいですね。
飲む練習をする時のポイント
- 大人が介助せずに自分でコップで飲む練習をしよう
- こぼれても良い環境(ex.お風呂場など)で赤ちゃんの自由にさせてあげよう
- 哺乳瓶卒業も視野に、コップ中心へ切り替えていこう
母乳やミルク以外の初めての飲み物は、白湯や麦茶から始めていきましょう。
赤ちゃん用のイオン(電解質)飲料は、発熱や下痢の時などの水分補給には良いですが、糖分も含まれているので飲み過ぎに気をつけましょう。
果汁入りジュースや乳酸菌飲料は、糖分が多く虫歯の原因にもなります。
また、1歳を過ぎれば牛乳を与えることができますが、どれも食前にあげると満腹になって食事に影響しますので、よく話し合いながら上手にあげられると良いですね。※3
大切なことは赤ちゃんの反応をよく観察すること
最後に、赤ちゃんとコップなどの練習をする時にぜひ意識してほしいことがあります。
それは、声かけやお互いの目線、姿勢といったコミュニケーションについてです。
赤ちゃんにしっかり飲んでほしいがゆえに、必死になってしまう気持ちもよくわかります。
ですが、赤ちゃんはママやパパの表情や声のトーンをよく観察しているので、無理にやろうとするとびっくりしてしまいます。
身体の向きを整えたり、良い姿勢にするだけで飲みやすさが違ってきます。「上手だね〜」など、たくさん赤ちゃんを褒めてあげながら楽しく練習することが、1番忘れてはならない視点です。
今回はいかがでしたか?うまくいかない経験を重ね、赤ちゃんはいつの間にか上手に飲めるようになる時がきます。焦らず見守ってあげましょう。
他にも気になることがあれば、いつでもXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。
※1 「授乳・離乳の支援ガイド」改定に関する研究会 ,授乳・離乳の支援ガイド, 厚生労働省,2022/07/12閲覧, ※2 国⽴研究開発法⼈ 国⽴成育医療研究センター乳幼児健康診査事業 実践ガイド,厚生労働省,2022/07/13閲覧, ※3 <実践編>生後12~18か月ころ:離乳完了期,赤ちゃん&子育てインフォ,母子衛生研究会,2022/07/13閲覧,
https://www.mhlw.go.jp/content/000640086.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000520614.pdf
http://www.mcfh.or.jp/jouhou/rinyushoku/jissen12_18.html
記事を執筆したのは…
株式会社With Midwife
代表取締役
岸畑 聖月
きしはた みづき
PROFILE14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。
本記事のイラスト:Junphant
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