#{title}

【助産師執筆】妊娠18週
便秘がつらい…実は困っている
妊娠中のお通じ事情

#{title}

妊娠18週に入りましたね。この時期の子宮はメロンくらいの大きさまで成長しています。子宮の増大により、胃や肺が圧迫されて、早い方では動悸や息切れ、胸やけなどのマイナートラブルが出現する方もいます。
赤ちゃんの変化としては、身体のバランスが3〜4頭身となり、頭には髪の毛が生え、顔にも脂肪がつき始めるため、次第に赤ちゃんらしいかわいい顔つきになってきます。超音波エコー検査では羊水を飲み込む様子が確認できたり、5本の指先が見えたりと健診が楽しみになる時期です。赤ちゃんの成長が垣間見えて嬉しい反面、ママの不調が出やすい時期でもあります※1
今日は妊娠期のマイナートラブルの中でも代表的な「便秘」についてお伝えしていきたいと思います。

  • 妊娠中は非妊娠時よりも便秘になりやすい!主な原因はこの3つ
  • 便秘改善の基本は生活習慣を見直すこと
  • 妊娠中は刺激性の少ない便秘薬を使いましょう
  • 便秘が原因で切迫早産になる恐れも!?


妊娠中は便秘になりやすい?原因を理解しよう!

妊娠中の便秘にはいくつかの原因があります。ひとつひとつ確認していきましょう。

#{title}

●妊娠中のホルモン

妊娠中には、黄体ホルモン(プロゲステロン)という妊娠を維持したりおっぱいの分泌準備に必要なホルモンが増えます。このホルモンは、胎盤をつくることを促す働きがあると同時に、消化管の吸収を抑制する作用も持っているため、腸の動きが鈍くなる要因となります。さらに黄体ホルモンは、子宮が赤ちゃんの成長とともに大きくなれるように、子宮周辺にある消化器の筋肉を緩める働きも持っています。この働きが大腸を動かす大腸平滑筋まで緩めてしまい、その結果、便を押し出す力が弱くなり便秘に繋がりやすくなります※2
また、これが原因で力強く息むことで、その後「痔」になることもあり、注意が必要です※3

●つわりなどによる水分・食物繊維不足

妊娠初期の“つわり”が原因で食事量が減ったり、食事内容が偏ると腸内で作られる便の量も減ってきます。そのため便意を感じにくくなるとされています。また食物繊維や水分が不足しやすく腸の動きが鈍るため、さらに便が硬くなり、便秘を引き起こしやすくなります。

●運動不足

妊娠中はおなかが大きく、腰痛や動悸などのマイナートラブルも起こりやすく、非妊娠時と比べて運動量が低下しやすい時期です。このような運動不足は、便を押し出す腸の動き(ぜん動運動)を低下させるため、便秘の原因になると考えられます。


具体的な改善策はこれ!

●こまめな水分補給と食物繊維

水分補給は、便秘対策の基本です。特に、起床時に水分を摂ると腸を刺激して便意を促す効果が期待できます。毎朝寝起きにコップ1杯程度の水を飲む習慣をつけると良いでしょう。
また水分摂取は食事から補うこともできます。水分を保持する水溶性食物繊維を摂ることもおすすめです。水溶性食物繊維の代表として納豆、きな粉などの豆類、海藻類、果物などがあります。
他にかつお節、漬物、味噌、ヨーグルトなど発酵食品を摂取することも腸内フローラの改善に繋がり、腸ぜん動運動の促進にもなります。ただし発酵食品は塩分が高い食材も多いので妊婦さんは摂りすぎに注意しましょう。※4

#{title}

●生活習慣の見直し

妊娠期間中は体の不調等もあり生活習慣が乱れやすくなります。便秘を改善したい場合、生活リズムを整えることで自律神経が整い便通改善にも繋がります。
その他にも朝食を摂ることで、体内のリズムが整い胃や腸を刺激してお通じを良くします。便意がなくても毎日決まった時間にトイレに行くことで徐々に排便のリズムが整い、便秘の解消に繋がることもあります。
タイミングはやはり朝食後がおすすめで、「絶対に出そう」と気負わず「出たらラッキー」と気楽に考えましょう。※5

●適度な運動

ウォーキングやマタニティビクス、マタニティヨガなどの有酸素運動は、便秘の改善に効果的です。(詳細は妊娠14週の記事「妊娠中はどのくらい動いていいの?妊娠中の活動や運動についてお答えします」参照)
またストレッチのような動きも効果的とされています。体に負担をかけないように注意しながら、少しずつ取り入れてみましょう。ただし、主治医から安静の指示が出ている方や、おなかが張りやすい方は避けてくださいね。

●医師への相談

便秘は我慢する必要はありません。不快感が続くと妊娠生活も楽しく過ごせなくなります。
2~3日排便がない、便が溜まっている感じがして不快などがあれば一度主治医に相談するようにしましょう。


妊娠期によく使うお薬

妊娠中は使用できるお薬が限られていますが、"酸化マグネシウム"は数ある便秘薬のなかでも刺激の少ない下剤に分類され、刺激性の下剤と異なり腸を直接刺激せず排便を促してくれます。
おなかが痛くなりにくい特徴の他、薬に対する依存性も弱く妊娠中でも処方できるので、多くの産院で使用されています。また胃の中で胃酸を中和する制酸作用もあり、胃の粘膜を守る作用もあります。腸の中では水分の再吸収を抑えてくれる働きがあり、便が水分で膨張し、腸に物理的な刺激を与えるため排便を楽にしてくれます。
そのため、水分摂取が少ないと効果が期待できないので内服時にはコップ一杯以上の水分をとるなど、飲水量には気をつけましょう。※6
また、よく「酸化マグネシウムの粒が大きくて飲めない」といったご相談も受けます。その場合は液体タイプの便秘薬もあるので医師に相談するのがおすすめです。

#{title}


妊娠合併症と便秘の関係性

便秘症状が悪化するとおなかが張る原因にもなります。お産が進行していなければ、便を出す息みで赤ちゃんが生まれてしまうことはありませんが、切迫早産と指摘を受けた方は、便通コントロールを意識する必要があります。
また逆に便秘の痛みだろうと思い放置していたが、実は切迫症状の痛みだった、常位胎盤早期剥離だったという事例もあります。痛みと共に出血がないか、他の部分に痛みがないかなどを意識しつつ、便秘症状は我慢したり自己判断したりせずに専門家である医師に相談するようにしましょう。※7

受診の目安について、以下の動画4:05ごろで説明しています。参考にしてみてくださいね。



妊娠中の便秘は多くの方が経験しています。まずは自身の食生活や生活習慣も整えていきましょう。
また、妊娠中の便秘はそのまま産後にまで継続する方もいます。妊娠中から気にかけてあげることで産後も安心して、気持ちよく生活できることでしょう。

気になることはXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。

参考文献

※1 病気がみえるvol.10 産科第2版,メディックメディア出版,2011

※2 早乙女智子,妊産婦の食生活について‐便秘と体重管理‐,日本臨床栄養学会雑誌26(4),2005,p297 ‐300

※3 田中宏和,妊婦の生理学,日本臨床麻酔学会 vol.38,2018

※4細川モモ,BABY BOOK Ⅱ Luvtelli Tokyo&New York,2014,p173

※5 e-ヘルスネット,便秘と食習慣,厚生労働省,2022/6/6閲覧,
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-010.html

※6 酸化マグネシウム錠330mg「ヨシダ」添付文書,一般社団法人くすりの適正使用協議会,2022/6/6閲覧,
https://www.rad-ar.or.jp/siori/search/result?n=42102

※7 妊娠中、子宮頸管短く切迫早産心配 医師に聞く治療法、便秘解消も大事,福井新聞オンライン,2019/3/11,
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/812932


記事を執筆したのは…

株式会社With Midwife
代表取締役

岸畑 聖月
きしはた みづき

PROFILE

14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。

本記事のイラスト:Junphant

ページの先頭

W/Story 目次一覧へ