【助産師執筆】妊娠19週
妊娠中の旅行「マタ旅」、行きたいなと思った時に考えること
妊娠19週に入りましたね。妊娠5ヵ月もいよいよ最後の週に突入しました。ママと赤ちゃんを繋ぐ胎盤も完成して、毎日たっぷりと栄養が注がれ、「妊娠に対する安心感」が増す時期になります。子宮自体も膨らんだ風船のように丸く目立ち、胸も2カップ程大きくなるため、マタニティマークを付けていなくても妊婦さんと分かるようになります。また、おなかが大きくなるにつれ足の浮腫みや、おなかの張りを感じる方もいるかもしれません。
赤ちゃんの成長としては大きさが250g前後、イメージとしてはマンゴー程の大きさとなります。※1
手足の動きも活発になり、胎動が分かるママも増えてきます。また胎脂と呼ばれる天然の保湿クリームのような膜が作られ、羊水の中でも赤ちゃんを守ってくれます。
赤ちゃんも成長し、おなかも妊娠後期より大きくないこの時期に旅行を計画される方も少なくありません。今回は妊娠中の旅行(マタ旅)に焦点を当ててお伝えしていきたいと思います。
- マタ旅は慎重に。突発的なハプニングが起こることも想定して
- 旅行先での万が一に備えての準備が大切
- 旅行スケジュールはゆとりをもって無理のない範囲で
- 妊婦は温泉禁忌!?正しい知識を知ろう
妊娠中の旅行はいつからOK?
妊娠中の旅行は禁止されている訳ではありませんが、起こり得るリスクを考えるとすべての期間において控える事をお勧めします。妊娠15週の時期にお伝えした「来週から妊娠安定期!?でも油断は禁物。ポイントをおさえて安心して過ごそう」の記事でもお伝えしましたが、医学的には妊娠全期において安定期という言葉はありません。それを踏まえた上で、旅行に行きたい場合には以下の内容を参考にしてくださいね。
まず、旅行に行く時期として、胎盤が完成しつわりが治まる妊娠5ヵ月以降が比較的動きやすくお勧めです。より詳細にお伝えすると、妊娠16週以降から妊娠31週頃(妊娠8ヵ月)の間に計画すると良いでしょう。
妊娠後期に入ってからの旅行は破水や切迫早産の恐れもあります。また、息苦しいなどといったマイナートラブルも出現しやすくなり、避けるのが望ましいでしょう。さらに、前提として、主治医から旅行の許可を得ることが大切です。※2
マタ旅での注意点
●必要物品
妊娠中の旅行に無理は禁物!
万が一に備えての準備が大切です。
- 母子手帳
- かかりつけ病院の診察券
- 保険証
- 携帯電話
- 温度調節できる服装(羽織)
- 歩き慣れたスニーカー
- エチケット袋
- ナプキン(破水や出血に備えて大きめのサイズ)
- 常備薬(特に合併症のある方)
移動方法は、乗り物の特徴や移動距離、時期や時間帯など、さまざまな要因を総合的に判断して決めましょう。
どの移動方法でも体調に合わせて休憩し、長時間同じ姿勢をとらないように座る姿勢を変えるなどして疲れない工夫をしてくださいね。
自家用車での移動は自分のペースで行動したい妊婦さんの旅行に適しています。ゆったりとしたスケジュールを組み、トイレ休憩などを増やしてのんびりと旅行を楽しみましょう。
車は、いざとなった時に病院に直接向かうことができるというメリットもありますが、デメリットもあります。長時間同じ姿勢をとり続けるとおなかが張ってしまったり、気分が悪くなる可能性もあります。また、一度渋滞にハマったら抜け出せないことも。トイレの回数が多い妊娠期ですので、こまめな休憩をとるようにしましょう。リクライニング機能を活用したり、クッションを持参して無理のない体勢を心がけるのもポイントです。
電車に乗る時間や、乗り換えの時間がギリギリになると、小走りに急いでしまったり、負担になることがあります。どの移動手段にも言えますが、ゆとりを持って行動しましょう。
なるべく人混みを避けて、無理のない旅行のためにも指定席があれば活用するのがおすすめです。
妊婦が飛行機を利用するためには、各航空会社で対応が違いますので搭乗規定を事前にチェックするようにしましょう。また、どの航空会社も予定日1か月前には所定の診断書を添付しなければ搭乗できません。さらに予定日7日前以降では医師同伴が義務付けられています。里帰り出産などやむを得ない場合を除いてはなるべく飛行機を使う旅行は避けたいところです。どうしても飛行機を使って旅行したいということであれば、医師に相談し許可を得るようにしましょう。
また妊娠中に飛行機に乗るリスクとして、妊娠中は血液が固まりやすいので、妊娠していない人に比べてエコノミークラス症候群を引き起こしやすいとされています。こまめな水分摂取、着圧ストッキングの使用、30分に1回程度下半身を動かすといった対策をしていきましょう。
どの移動方法でも、長時間同じ姿勢にならないように心がけましょう。スケジュールに余裕を持って移動方法を選択しつつ、1人での旅行は避けるようにしてください。
マタ旅でのおすすめ旅行場所
妊娠中には突然体調が悪くなることもあります。もしもの時のために旅行先は自宅から1・2時間程度の近場で人混みの少ない場所を選びましょう。
他にも平日や閑散期を狙ってゆっくり過ごせるように心がけることも大切です。宿泊先にも妊婦である旨を伝えておくと配慮してもらえる場合もありますし、マタニティプランを活用するのも良いですね。
マタ旅の候補先でも人気な温泉ですが、「妊婦が温泉に行っても大丈夫ですか?」といった声をよく耳にします。結論からいうと、妊婦が温泉を利用することは問題がないとされています。
温泉の禁忌症に妊娠初期・後期と書かれていることもありますが、温泉そのものがダメということではなく妊娠初期と後期では流産や出血や破水が起きやすかったり、脳貧血を起こすリスクがあるため、不特定多数を対象として温泉浴を提供する場所として念の為、記載されていることが多いようです。
また、温泉に入ること自体は問題ありませんが温泉の床は滑りやすく転倒の恐れや、温度によってはのぼせやすくもなります。短時間入浴にしたり貸切風呂でリラックスして入浴できるように選択していきましょう。※3
突発的なハプニングが起こることも考慮して慎重に考えよう
赤ちゃんが生まれたらなかなか旅行には行けなくなりますし、夫婦2人の思い出も作りたい!と、旅行を計画したい気持ち、とってもよくわかります。ですが妊娠中は急に体調が変わったり、予測できない突発的なハプニングが起こることもあり、妊娠全期を通して大丈夫という保証はありません。
その観点からも、残念ながら医療者側からマタ旅をおすすめすることは難しいです。突発的なハプニングが起こることも考慮して慎重に考えましょう。
また、旅行当日になって体調が優れないときは、夫婦でよく話し合いキャンセルする勇気も必要です。医師に相談しつつ、ゆったりとリラックスできる旅を楽しんでくださいね。
気になることはXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。
※1 胎児計測と胎児発育曲線について,日本産科婦人科学会周産期委員会,2022/7/1閲覧,
https://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/PUB/ninken/jsog_20111024.pdf
※2 行っても大丈夫かしら?-妊娠中の旅行-,日本医師会,2022/7/1閲覧,
http://www.kagoshima.med.or.jp/people/topic/2000/060.htm
※3 妊婦と温泉,日産婦医会報,2022/7/1閲覧,
https://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/jigyo/TAISAKU/kaihou/H22/H22-02.htm
記事を執筆したのは…
株式会社With Midwife
代表取締役
岸畑 聖月
きしはた みづき
PROFILE14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。
本記事のイラスト:Junphant
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