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【助産師執筆】妊娠29週
無痛分娩って?選択するときのポイント!

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妊娠29週となりました。おなかの赤ちゃんの体重は950〜1650g程度※1 とすくすくと成長しています。背中の位置や足でキックする位置も、もうはっきりとわかる頃でしょうか。しかし、お母さんにとっては、肺が圧迫されて少し息苦しく感じるかもしれませんね。ゆっくりと深呼吸をする練習をして、大きくなる赤ちゃんと上手に過ごす習慣を身に着けましょう。赤ちゃんが音にも反応する時期になりますので、たくさん声をかけてあげて下さいね。

さて、皆さん出産場所や出産方法についてはもう決めていますでしょうか。最近は、無痛分娩のことを耳にする方も増えたかと思います。今回は、気になる無痛分娩の情報についてお話ししたいと思います!

  • 無痛分娩は脳に伝わる「痛み」を断ち切る
  • 無痛分娩の種類は”硬膜外麻酔”や”点滴からの鎮痛”
  • メリットは疲労が少なくなること
  • デメリットはお産が長引くことと麻酔の副作用
  • 施設が情報公開すべき項目が提言されている
  • 各施設の特徴を理解して、病院を選ぼう!


無痛分娩とは?

無痛分娩の定義と近年の動向※2

無痛分娩は、麻酔によって陣痛の痛みを和らげ、分娩する方法のことです。元々は、お母さんが心臓や血圧に問題を抱えている場合の出産など、医学的に無痛にすることが必要な妊産婦を対象としていました。近年の無痛分娩の多くは、お母さんの希望により実施されています。
無痛分娩率は2008年には2.6%だったのに対し、2016年には6.1%となり、無痛分娩を選択する人が増えてきていることが分かります。

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そもそもどうしてお産は痛いの?

分娩の過程で子宮が収縮したり、子宮出口や膣が引き延ばされたりすると、その刺激は神経(黄色く描かれた線)を介して脊髄に伝わります。その後、脊髄を通って脳にいき、「痛み」として感じられます※3 。もちろんお産の進行に伴い、痛みの部分や程度は変わってきます。無痛分娩では、この「痛み」の経路を断ち切るためのアプローチをしていきます。

どんな方法があるの?

無痛分娩の実施方法には、2つの代表的な方法があります。背中から麻酔の管を入れる硬膜外鎮痛と、点滴からの鎮痛薬投与です(表※3)。
硬膜外麻酔が一般的ですが、血が固まりにくい場合や、出血や脱水が著しい時など、場合によっては選択できない場合もあります。また、麻酔の効き方にも個人差があります。

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無痛分娩のメリットとデメリット

無痛分娩は薬剤の使用や処置が伴うお産になりますので、やはりメリットもデメリットもあります。両方の点をよく考えて、分かりにくい部分は医師に確認するなどして、しっかりと理解した上で選択しましょう。


●無痛分娩のメリット

何といってもお産の痛みが軽くなることです。そのため落ち着いて出産ができ、疲労が少なく、産後の回復が早いという声もたくさん聞きます。
医学的には、血圧が高めの妊婦さんは赤ちゃんへの血流が滞りやすいのですが硬膜外鎮痛を行ったところ、赤ちゃんへの血流が増えたという報告があります※4
また硬膜外無痛分娩を行ったお母さんは、痛みがコントロ―ルされるため、赤ちゃんにしっかりと酸素を送ってあげながら出産することができます※5。たっぷりの血液と酸素をあげることは、赤ちゃんが元気に生まれてくるために、とても大切なことです。

●無痛分娩に関するデメリット

赤ちゃんが産まれるまでの時間が長くなり、お産の最後の方には吸引や鉗子といった器械を使う頻度が高くなります※6。吸引分娩や鉗子分娩になる確率が高くなる原因は分かっていないのですが、お母さんのいきむ力が少し弱くなるためという説があります※7。また、陣痛を促す薬を使う頻度が高くなります。

麻酔によって起こりうる症状※6

麻酔を使用するので、以下のような症状が起こる事があります。

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病院選びはここをチェック!

厚生労働省は、無痛分娩を希望する妊婦とその家族が、分かりやすく必要な情報に基づいて分娩施設を選択できるように、無痛分娩の診療体制に関する以下の情報をウェブサイト等で公開するべきだと提言しています※8

・無痛分娩の実績
・無痛分娩に関するしっかりとした説明文書
・無痛分娩の方法
・急変が起きた時にどのように対応するか
・急変時のシミュレーションの実績
・担当医の麻酔科研修歴、無痛分娩実施歴、講習会受講歴、救急蘇生への備え事例報告への参加状況
・ウェブサイトの更新日時

医師としっかりと相談してそれぞれの施設の特徴や体制を理解し、なによりも妊婦さんが納得した上で施設を選ぶようにしましょう。

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自分らしいお産をしよう!

無痛分娩ができる施設も増えてきており、選択肢として身近になってきています。お産の痛みがとても怖いという方は、無痛分娩を選択することで恐怖が無くなり、分娩に前向きになれるかもしれませんね。副作用やデメリットが気になるという方は、自然分娩を選択することで心の準備ができるでしょう。
一番大切なのは、自分の望むお産が選択できることです。少し先のお話ですが、どのようなお産にしたいかを考えることはとても大切です。
お住まいの地域によっては、分娩方法を選択できる施設が限られることもあるかもしれません。そんな時もその中でも自分が「ここでお産をしたい!」と思える出産場所を、是非ご家族とも話し合いながら選んでくださいね。

また、気になることはXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。

参考文献

※1 日本超音波学会,表3-2 胎児体重の妊娠週数毎の基準値, 超音波胎児計測の標準化と日本人の基準値,2022/3/17閲覧,
https://www.jsog.or.jp/public/shusanki/kijunchi.pdf

※2 無痛分娩の実態把握及び安全管理体制の構築について,第61回社会保障審議会医療部会,厚生労働省,2022/3/17閲覧,
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000203217.pdf

※3 Q1. どうしてお産は痛いのですか?,無痛分娩Q&A, 日本産科麻酔学会JSOAP,2022/3/17閲覧,
https://www.jsoap.com/general/painless/q1

※4 Q13. 硬膜外無痛分娩のメリットはなんですか?, 無痛分娩Q&A,日本産科麻酔学会JSOAP,2022/3/17閲覧,
https://www.jsoap.com/general/painless/q13

※5 M Hägerdal, Minute ventilation and oxygen consumption during labor with epidural analgesia, Anesthesiology, Nov;59(5), 1983 , 425-427,
https://pubs.asahq.org/anesthesiology/article/59/5/425/27662/Minute-Ventilation-and-Oxygen-Consumption-during

※6 「無痛分娩」を考える妊婦さんとご家族の皆様へ,厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000211831.pdf

※7 Q15. 硬膜外鎮痛はお産に影響するでしょうか?,無痛分娩Q&A, 日本産科麻酔学会JSOAP,2022/3/17閲覧,
https://www.jsoap.com/general/painless/q15

※8 無痛分娩の実態把握及び安全管理体制の構築についての研究:無痛分娩の安全な提供体制の構築に関する提言,厚生労働省, 2018.3.29
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000203226.pdf


記事を執筆したのは…

株式会社With Midwife
代表取締役

岸畑 聖月
きしはた みづき

PROFILE

14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。

本記事のイラスト:Junphant

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