【助産師執筆】妊娠39週
ママと赤ちゃんを守るために。
医療処置の必要性も知っておこう
妊娠39週に入りましたね。今週も赤ちゃんとママの様子をみていきましょう。
この時期の赤ちゃんの体重は2300~3700g程度※1と個体差が大きい時期ですね。赤ちゃんは産まれる準備のために、頭が骨盤の中に降りてきます。頭が骨盤の中に固定されることで、以前より胎動が鈍く感じることもありますが、胎動がなくなることはありません。産まれるその時まで胎動は感じられます※2。
また、赤ちゃんが骨盤の中に下がったことで、胃の圧迫感や動悸が楽になる方もいます。しかし、膀胱の圧迫感は強くなり、頻尿や尿漏れに悩まされたり、恥骨の痛みを辛く感じる方もいます※2。
日々の生活も辛くなるかもしれませんが、周囲の人に頼りながら赤ちゃんが産まれてくるのを待ちましょう。
今回は先週に引き続きお産のお話です。ママも赤ちゃんも安全にお産するために、専用の検査機器で陣痛や赤ちゃんの状態を確認したり、状況に応じて薬を使うことがあるかもしれません。突然そのような場面に直面すると不安も大きいと思いますので、事前に知って心の準備をしておきましょう。
- 赤ちゃんの心拍でお腹の中の赤ちゃんの様子を確認
- 陣痛が弱い時には促進剤が必要な時もある
- 赤ちゃんの産まれ方は十人十色
- お産の主役はママと赤ちゃん
医療のお手伝いが必要な人ってどれくらい?※4
実は出産方法は様々あり、赤ちゃんとママに合った方法を選択することが大切です。
どんな方法があるのか、どのくらいの人がどんなお産をしているのか、参考までにみてみましょう。まず、下からのお産(経腟分娩)で機械を使わないお産が約61%、赤ちゃんの頭を出す手伝いをする吸引分娩が約4%、鉗子分娩が約1%、帝王切開(予定帝王切開と緊急帝王切開の合計)が約34%となっています。
この割合をみなさんはどう感じましたか?出産方法は上記のように様々ですが、お産の状況に応じて医師が判断し、医療の助けが必要になることもあります。もしかしたらみなさんも必要になるかもしれない、医療処置について知っておきましょう。
おなかにつけるあの機械は何をみるの?※3
おなかにつける機械のことを分娩監視装置といいます。おなかにベルトで2つのセンサーを装着します。ひとつは陣痛を測る陣痛計、もうひとつは赤ちゃんの心音を測る胎児心音計です。陣痛の強さや間隔、赤ちゃんの心拍数を一定時間観察することで、お腹の中の赤ちゃんが元気かどうか、ママの陣痛が正常かどうか知る事ができます。お産の進行状態や赤ちゃんの状態に応じて、一時的に外すこともあれば、長い時間装着したまま様子をみることもあります。
医療処置ってどんな時に必要?何をするの?※3
- ●陣痛促進剤
- 陣痛促進剤は、陣痛があっても弱く、時間がかかってママや赤ちゃんに負担がかかることが予測される時や、破水してから陣痛が来ず感染のリスクがある時、42週近くなっても陣痛が来ない時に使う事が多いです。
ママと赤ちゃんの状態を確認しながら、薬の種類を選択したり、投与量も少量から調整して、ママと赤ちゃんにトラブルがないか確かめながら増量していきます。陣痛促進剤を使用した瞬間、急に陣痛が強くなることはないので安心してくださいね。 - ●会陰切開
- 会陰は、膣の入口から肛門までとその周囲の皮膚のことをいいます。初産婦さんは会陰が伸びにくいことがあります。そのため、赤ちゃんの頭が出るまでに時間がかかってしまったり、会陰が予期せず大きく裂けてしまう可能性があります。そのため、会陰切開といって、会陰を数センチ切ることがあります。会陰に切れ目を入れることで、予期せぬ方向に裂けてしまうことを防ぎ、裂傷を最小限に留めたり、何より緊急時には早く赤ちゃんを出してあげることができます。会陰を切ると聞くと不安も大きいと思いますが、切開する時には麻酔も使用するので痛みはほとんど感じません。従って、切開されたことに気付かないママも多いです。会陰切開が怖い方は、バースプランとして会陰切開することをお産中に言わないでほしいなど、希望を伝えておくのも良いですね。
- ●吸引分娩と鉗子分娩
- 子宮口が全部開いており、赤ちゃんの頭も下がってきている状態なのに、ママの疲労感が強く陣痛が弱かったり、赤ちゃんの心拍数が下がり早く産まれて来た方が良い場合に行います。吸引分娩は赤ちゃんの頭に、金属やシリコン、プラスチックの丸いカップを装着して引き出します。鉗子分娩は金属製のスプーンのような器具を2つ使用し、赤ちゃんの頭を横から挟むようにして引き出します。ママの陣痛やいきむ力に合わせて処置を行うので、最後までママのいきむ力は大切です。医師や助産師みんなで呼吸を合わせて頑張りましょう。
- ●予定帝王切開と緊急帝王切開
- 帝王切開は下からのお産(経腟分娩)が難しいと判断された場合におなかを切開して赤ちゃんを出産する方法です。予定帝王切開とは、逆子(骨盤位)や子宮の出口に胎盤がある(前置胎盤)場合など下からのお産が難しい場合に、事前に予定を立てて行う帝王切開のことです。
緊急帝王切開はお産中に予想外のトラブルがあり、ママや赤ちゃんのどちらか又は両者に心配な所見があり、すぐに出産した方が良い場合に行います。 下からのお産も帝王切開もママは命がけで赤ちゃんを産みます。どちらも立派なお産ですし、帝王切開の場合でもバースプランを立てることは可能です。
いいお産ってどんなお産?
お産の始まりや流れは十人十色。1人として同じお産はありません。同じママが出産する場合も、1人目と2人目では全然違います。予定日を過ぎて誘発が必要になるかもしれませんし、破水から始まるかもしれません。早く産まれてくる子もいるでしょう。
もちろん、妊娠中にイメージを膨らませ、イメージ通りのお産ができれば良いのですが、そうならない可能性もあることも知り、心の準備をしておくことが大切です。お産にハプニングはつきものです。産後に振り返りをしているとすごく頑張っていたママから「言われた通りに出来なくて…」という言葉を聞いて驚くことがあります。お産の時のことで気になることがあれば、産後に医師や助産師に聞いてみると良いですね。
赤ちゃんを産むまでの道のりに、不正解はありません。産まれる力と産む力を信じて自分らしいお産をしましょう。
いかがでしたか?出産方法は人それぞれ個性があります。急に処置が必要になる場合もあると知っておくことで、いざという時に落ち着いて対応できます。病院によって実施している処置が異なる場合もあるので、詳しくはかかりつけの医師や助産師に聞いてみてくださいね。また、病院の医師や助産師はいつでもあなたの味方です。不安な気持ちは、どんな時も遠慮なく相談してみてください。 その他、気になることはXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。
※1 胎児計測と胎児発育曲線について,日本産科婦人科学会周産期委員会,2022/8/2閲覧,
https://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/PUB/ninken/jsog_20111024.pdf
※2 荻田和秀,最新改訂版らくらくあんしん妊娠・出産,学研プラス,2021
※3 株式会社ベビーカレンダー,最新 妊娠・出産オールガイド,新星出版社,2021
※4 周産期委員会(平成20年度専門委員会報告),日本産科婦人科学会雑誌Vol.6 No.7,2009,1543-1567,
https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/shusanki_vol61no7.pdf
記事を執筆したのは…
株式会社With Midwife
代表取締役
岸畑 聖月
きしはた みづき
PROFILE14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。
本記事のイラスト:Junphant
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