【助産師執筆】妊娠40週
出産予定日はあくまで“予定”
不安になる前に知っておきたい正しい情報
妊娠40週を迎えました。これまで身体や気持ちの変化に向き合いながら、よく頑張ってこられましたね。出産予定日まであと何日か、指折り数えてきたと思います。中には前駆陣痛やおしるしなど、お産が始まる兆候がみられる方もいるでしょう。お産の進み方は個人差があります。少しでも心配な時は、直接病院へ相談しましょう。
40週頃の赤ちゃん、だいたい体重は2390〜3860g程度※1です。赤ちゃんは膝をおなかに引き寄せ、あごを胸につけるような丸まった姿勢をとり、ママの骨盤の中を通ってくる準備をしています。
いざ出産予定日を迎え、赤ちゃんに早く会いたいという期待とともに、いつになるのかという不安もありますよね。今回は、出産予定日を迎えられたみなさまが安心できるように、改めて出産に関する情報をお伝えします。
- 出産予定日は妊娠40週0日
- 正期産とは妊娠37週0日から妊娠41週6日
- 妊娠40週での分娩が最も多いわけではない
- 過期産の頃に分娩誘発を検討
- 分娩誘発の基本的な2つの方法を知ろう
- 不安になる前に方針について話し合おう
出産予定日って、何から決めている?
日本では、妊娠週数を十月十日(とつきとおか)で計算する習慣があります。これは最終月経の第1日目を妊娠0日、月経周期を28日として計算し、10ヶ月目に当たる妊娠280日、つまり「妊娠40週0日」が出産予定日です。
月経周期が規則的な方もいれば不順の方もいるため、これだけだと個人差が出てしまいます。産婦人科診療ガイドラインによると、出産予定日は、「いつもの月経周期の最終月経日」または「胚移植日か特定できる排卵日」を参考にしながら「妊娠初期の超音波検査でみた、正確な赤ちゃんの大きさから導き出された出産予定日」を優先し、決めることを推奨しています。※2
出産予定日が途中で変わった、という方もいると思いますが、上記のような理由があったわけです。
出産予定日を過ぎたけど…平気?
赤ちゃんはみんな出産予定日に産まれると思われますが、“予定”であることを知っておきましょう。妊娠37週0日から41週6日までの出産を「正期産」と呼びます。出産予定日は妊娠40週0日でした。
出産予定日を過ぎても、すぐに焦る必要はありませんが、なかなか陣痛が来なかったりお産の兆候がない場合は心配になりますよね。周囲の期待にプレッシャーを感じることもあると思います。不安な思いは我慢せず、病院の担当医の先生にお声がけ下さい。ママがご自分の出産をどうしたいかが、何より大切なことです。
ご家族がこちらのコラムをご覧の場合は、ワンポイントアドバイスをお伝えしたいです。出産予定日を過ぎたことで焦る気持ちは、妊婦さん自身が1番強く感じます。「まだかな?」「早く産まれるといいね」という言葉は不安を強めてしまうこともあります。そうした気持ちを理解し、そっと寄り添ってあげて下さいね。
分娩週数別の出生率をみてみよう
ではここで、周産期委員会から報告されている分娩週数の統計分布を見てみましょう。※3(図1)
妊娠40週での出産が最も多いわけではない
正期産である妊娠37週0日から41週6日までの出産のうち、最も分娩数が多いのは妊娠38週で正期産内でもばらつきがあるようです。もちろん出産予定日に出産される方もいますが、そうでない方も沢山いることがわかります。出産予定日にまだ出産していないことで、不安になって悩んでいる方がいたら、ぜひこちらの統計分布をご覧いただきたいです。
過期産の頃に分娩誘発を検討妊娠42週0日以降の出産を「過期産」と呼び、全妊娠の4〜10%と言われています※4。
上記の図では、正期産の終わりとされる妊娠41週6日を境目に、妊娠42週から一気に数が下がっています。過期産の時期になると、胎盤の機能が落ちてしまったり、羊水量が減ってくるなど、赤ちゃんへのストレスが起きやすくなるのです。可能な限り、過期産になるまでに出産となる方針が検討されます※5。
また、分娩誘発や促進の適応となる場合として「過期妊娠またはその予防」とされており、妊娠42週では原則として分娩誘発を勧められます※2。
分娩誘発とは、出産を目指すために、自然に陣痛が起きてお産が始まる前に子宮の収縮を起こして分娩を開始させることです。ここからは分娩誘発についてお話します。
分娩誘発の基本的な方法
子宮口をやわらかく開きやすい状態にするまず内診で子宮の入口(子宮口)を確認します。子宮口が閉じて硬い場合は、柔らかく開きやすい状態にして、子宮頸管の熟化を促す方法が選ばれます。海藻を乾燥させた細い棒状の医療用器材を使用し、子宮口に差し込むと水分を吸収し膨張することで、子宮口が広がる方法です。
また水風船のようなものを使用し、子宮口に挿入し水風船を膨らませることで、陣痛を起こす方法もあります。他にも色々な方法がありますが、破水など使用できない条件もあり、ママと赤ちゃんの状態に合わせて提案されます※6。
子宮口が開いてやわらかく準備が整ったら、分娩誘発剤を使用していきます。点滴からの投与と飲み薬があり、ママの状態に合わせて使い分けます。最近は、膣から座薬のようなものを入れて、陣痛を誘発する方法も出てきました。陣痛促進剤について、2つのポイントをお話しします。
- ●初日にお産に至らないこともある
- この陣痛促進剤を数時間投与しても効果が少ない時もあり、1日で出産とならないこともあります。その場合は中止し、翌日から再開することもあります。ママの体力が消耗することもあるのです。
- ●副作用がある
- ごく一般的なお薬にも副作用があるように、陣痛促進剤にも副作用があります。例えば、陣痛が強くなりすぎたり、おなかの調子が悪くなり下痢になることもあります。
時に休息は分娩を進めてくれるポイントです。仕切り直してまた翌日になった場合も、焦らず過ごしましょう。その他、細かく産婦人科診療ガイドラインに定められています※2。 効果的に陣痛促進剤を使用することで、ママと赤ちゃんにとって最良の出産となるように考えられています。
不安になる前に、方針について話し合おう
最後に病院の方針と、自分の気持ちとのバランスの保ち方についてお伝えします。自然に陣痛を待ちたいと思うことや、薬などを使わない出産を希望することは当然の権利です。
実際には、ママ自身の希望や病院の体制もそれぞれで、どのように分娩に至るかは様々です。自然に待つのか、分娩誘発をする場合はどんな方法がご自身に合っているのか、担当医と相談しながら最適な方法を選んでいきましょう※4。安心安全に出産に臨むためにも、しっかりと正しい情報を整理することが大切ですね。
今回のコラムはいかがでしたか?出産予定日を迎えても、リラックスを心がけて気持ちを落ち着かせましょう。かわいい赤ちゃんに会えるまであと少し。最後まで私たちはママたちを応援しています。他にも、気になることがあれば、いつでもXで「#ミッドワイフコール」をつけてご質問ください。みなさんからの疑問・質問をお待ちしています。
※1 胎児計測と胎児発育曲線について,日本産科婦人科学会周産期委員会,2022/04/05閲覧,
https://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/PUB/ninken/jsog_20111024.pdf
※2 産婦人科診療ガイドライン「産科編2020」,日本産科婦人科学会,2022/04/05閲覧,
https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_sanka_2020.pdf
※3 周産期委員会,日本産科婦人科学会雑誌,第73巻第6号,2022/04/05閲覧,
http://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=73/6/073060664.pdf
※4 出産に際して知っておきたいこと,妊娠・出産をお考えの方,国立成育医療研究センター,2022/04/05閲覧,
https://www.ncchd.go.jp/hospital/pregnancy/bunben/guide.html
※5 過期産児,23.小児の健康上の問題,MSDマニュアル家庭版,2022/04/05閲覧,
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/23-%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E6%96%B0%E7%94%9F%E5%85%90%E3%81%AE%E4%B8%80%E8%88%AC%E7%9A%84%E3%81%AA%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E9%81%8E%E6%9C%9F%E7%94%A3%E5%85%90
※6 陣痛誘発,18.婦人科および産科,MSDマニュアル プロフェッショナル版,2022/04/05閲覧,
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB/18-%E5%A9%A6%E4%BA%BA%E7%A7%91%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E7%94%A3%E7%A7%91/%E5%88%86%E5%A8%A9%E6%99%82%E3%81%AE%E7%95%B0%E5%B8%B8%E3%81%A8%E5%90%88%E4%BD%B5%E7%97%87/%E9%99%A3%E7%97%9B%E8%AA%98%E7%99%BA
記事を執筆したのは…
株式会社With Midwife
代表取締役
岸畑 聖月
きしはた みづき
PROFILE14歳の闘病の経験から助産師を志す。学生時代に起業を経験し、助産学・経営学を学ぶため京都大学大学院医学研究科に進学。
卒後は助産師として年間約2,000件のお産を支える総合病院に勤務。その後病院の外でもケアが重要と感じ、2019年株式会社With Midwifeを創業。企業に助産師を導入する顧問助産師サービス「The CARE」などを展開する。
現在も病院で勤務しながら、株式会社赤ちゃん本舗や信州大学との連携プロジェクトを統括するほか、公益財団法人大阪産業局で女性起業家支援にも従事。また内閣府主催少子化社会対策大綱における検討会やこども家庭庁に関する大綱創設に関する検討会に有識者として出席している。
W/Storyの全記事を株式会社With Midwifeが執筆・監修。
本記事のイラスト:Junphant
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